雪の降る前

そしてまたいつのまにか —

金城学院グリークラブ

「さまざまな個性ある響きをよくひとつにまとめている」と全国大会当日の会場メモに書いている。

その、ハーモニーが「溶け合う」感じが今年の金城学院グリーの特徴といえるだろうか。かつての

大谷短大輪声会がそうだった(輪声会については別記します)。自由曲はバスクの作曲家、ブストー

の宗教曲が3曲。

2010コーラスワークショップで札幌に来られた、ハビエル・ブストー氏。女声と、混声それぞれの

講座を受け持たれた。そのどちらでも強調したのは、ハーモニーをよく聞きなさい。ということ。

それも和声の3音がハモっていさえすれば、というものではない。同じパートの中のハーモニーを

まず合わせなさい(つまり音をそろえなさい)と繰り返し言われる(=Bassだけで30人以上という

当日の事情も影響した面もあるが・・)しかしそうしてパートの音を揃えていく中で、パートの中で

ピッチに限らず発声のベクトル(発声の方向)、テンション(息のスピード)そうしたものも

揃うようになってくる。そうして完全に一致したパートの音どうしを重ね合わせることで、素晴らしい

ハーモニーとなる。一連の作業を、限られた時間(=ワークショップの限界)のなかでも的確に指示し

こなしていく。そのことを見ただけで、彼が優秀な合唱指揮者としても活躍していることが実感できた。

そのブストー作品で、透明でクリアなハーモニーを実現していたのが、枝幸ジュニア合唱団、現在の

ウィスティリアコールだ。2002年全国大会びわ湖ホールでの彼女らのブストーは、まさに

一陣の爽やかな風がホールに吹き渡るかのごとく、だった。ちなみに指揮の藤岡直美先生は輪声会出身、

宍戸先生の教え子である。当時から時間が経っているのに耳がウィスティリアのブストーを忘れられず、

厳しめな評価になってしまうのは済まないなと思う。金城学院グリーが間違いなくいい演奏だったのは、

今日の審査員の評価が証明している。

閑話休題、あまり詳しく触れるつもりはないのだが・・。

実はたまたま、金城グリーの打ち上げ会場と隣り合わせの部屋に、大会当日の晩居合わせてしまい。

彼女らから見たら「おじさん達」の我々と交流を持ってくれて、個性的な面々の素顔を垣間みた。にもまして、

最後に一緒に歌おう!ということで混声+女声でできる曲を歌うことになり。偉い先生であればふつう

「じゃ私はこれで」と河岸を変えるため座を後にするんだろうけど、指揮者の小原恒久先生は突然の乱入者にも

笑顔で指揮をしてくださり、それどころか最後にお開きの際は、我々のひとりに名刺まで差し出されてご挨拶

くださった。先生のお人柄がしのばれるし、この指揮者のご指導のもとで金城学院は個性を溶け合わせてきた

のだ・・と実感として感じられた。

大学の部の女声合唱団は、初期の中国短大フラウエンコール、そして札幌大谷輪声会が、かつて女王の座を

保っていた。それに続く新女王誕生の予感が・・・、団員個々のポテンシャルは往時の輪声会以上とみた。

また、全国大会直後の23日(祝)、大学で恒例の「メサイア」に出演(ハードな日程!)したというので

大学HP等で見ると素晴らしい設備に恵まれた環境である。どうか今日の金賞にも満足せず、仲間と先生を信じて

ますますそのハーモニーに磨きをかけて行かれることを希望します。